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はじめに
臨床と教育の実践の場において,認知神経科学はどのような情報を提供しうるであろうか。この問題に対しては,賛否を含めいくつかの問題が指摘されている。例えば,非侵襲的な構造的および機能的ニューロイメージングは,小児の脳の発達とその異常に関する新しい知見を与えることができ,さらに教育と臨床の実践の向上に関しても新たな情報源となるという見解がある。しかし一方で,教育または医学と神経科学とを安易に結びつけることには,リスクが伴うとする意見も多い。すなわち,この見解の中では,認知神経科学の研究結果とヒトの教育・医療行為とを直接的に結びつけているという潜在的な欠点がみられると指摘されている1)。この立場からは,教育・臨床の実践と神経科学との関係は,「遠すぎる橋(a bridge too far)」と呼ばれている2)。
近年,特に欧米を中心として読字障害の研究が盛んに行われ,教育や臨床の場に大きな影響を与えているが,この障害に関して,「遠すぎる橋」という問題を解決すべく神経科学領域から期待されている課題には,次のようなものがある。①読みや計算のような根本的能力の基礎を成す神経過程の解明とそれらの障害を病態生理学的に理解すること,②学習障害に対する治療的介入の効果を科学的に評価しその転帰を予想すること,そして,③学習上の問題と神経精神障害のリスクがある個人を早期に特定し,早期介入の可能性を探ること,の3点である。以上の議論は,読みとその障害,およびそれらと教育・医療に関する問題に焦点を当てているが,同様の議論が他の領域の疾患や障害についても可能であり,実際にニューロイメージングを利用した治療や転帰に関する研究が進んでいる。
本稿では,まず,うつ病,強迫性障害,統合失調症,注意欠陥多動障害,側頭葉てんかん,アルツハイマー病などのいくつかの精神神経学的疾患において,機能的・構造的ニューロイメージングの技術が臨床的に有用な道具として使用できるか,特に治療効果や転帰予測という問題に関して有用な情報を提供しうるかという点について解説し,その後発達性失読に関する最近の研究について述べたい。
Abstract
Recent advances in cognitive neuroscience methods reveal the potential of neuroimaging as be a useful tool in clinical and educational practice. In this review, we review the literature and provide evidence that functional and structural neuroimaging can detect changes with treatment. Further, we show promising initial results showing that the addition of neuroimaging measures can enhance conventional methods to predict outcome and prognosis. Examples are drawn from disorders such as attention-deficit / hyperactivity disorder (ADHD), depression, schizophrenia, obsessive-compulsive disorder (OCD), temporal lobe epilepsy, Alzheimer disease and developmental dyslexia. This evidence raises the intriguing possibility of utilizing neuroimaging data as a critical component in assessing and predicting cognitive abilities and symptoms.
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