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尿ブドウ糖陰性でもケトン尿は発見される
尿ケトン体の検出はわりあいめんどうなもので,特にアセト酢酸のゲルハルト法などそれが陽性に出ても薬剤によるものかどうかの鑑別が必要となり,よほどのケース以外は検索されなかつた。ところが最近では1枚の試験紙や錠剤できわめて簡単に半定量できるようになり,薬剤の干渉もないとなると,糖尿病ばかりでなく,いろいろの疾患に容易に利用でき,むしろ糖尿病と関係ない疾患でのケトン尿症が多いのに驚く。なるほどエネルギー源としての糖の不足は,糖尿病のごとく利用不全によつてのみ起こるのではなく,供給不足でも起こりうるし,この供給不足は経口的に摂取不能の嘔吐,手術前後,つわり,消化器疾患(特にがん)や糖が効率よく吸収されない下痢症などでも,飢餓でも起こりうる。また代謝回転が異常亢進した,たとえば発熱とか甲状腺機能亢進などでも不足のエネルギー源を脂肪や蛋白に求めることになろう。
以上のようなとき,当然Acetyl CoAの過剰生成となるが,同時に体蛋白の消耗を伴つたりでアミノ酸からのOxalacetic Acidの供給不足が起こると,Acetyl CoAはTCA回路で代謝されにくくなり蓄積し,その2分子縮合したアセトアセチルCoA,次いで加水分解で生じたケトン体は腎の排泄閾が零に近い関係,血中に停滞することなくすぐ尿中に現われる。体内の糖貯蓄はきわめて少なく,特に成長の旺盛な乳幼児などではケトン体の処理能の未熟性も伴つて消化器疾患(周期性嘔吐症,消化不良症など)でのケトン尿症は少なくない。輸液によつて十分補われているようにみえても,ケトン尿症が観察されることは不十分な証であり,成人では手術後数日を経過したときなどにみる。
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