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特集 2型糖尿病診療における15のコントロバシー
Ⅰ日本人2型糖尿病の病態
糖代謝における臓器間相互作用と肝臓―神経系と内分泌系の関与―異論/争論,私の意見
Role of the liver in glucose homeostasis through inter-organ communication Involvement of neuronal and endocrine system
山田 哲也
1,2
,
片桐 秀樹
1,2
1東北大学大学院医学系研究科代謝疾患医学コアセンター 代謝疾患学分野
2東北大学病院 糖尿病代謝科
キーワード:
①肝臓
,
②脳
,
③臓器間相互作用
,
④迷走神経
,
⑤内臓神経
,
⑥求心性神経線維
Keyword:
①肝臓
,
②脳
,
③臓器間相互作用
,
④迷走神経
,
⑤内臓神経
,
⑥求心性神経線維
pp.327-332
発行日 2013年5月15日
Published Date 2013/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1415101511
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はじめに
実験医学序説を著したクロード・ベルナールは,肝臓の糖代謝が神経支配のもとにあることを示唆していた.これは,インスリン発見以前のことであり,発見後の肝臓の糖エネルギー代謝調節研究の焦点は,その後相次いで発見されたホルモン/液性因子による調節の解明にシフトしていった.精力的な研究が行われた結果,インスリンやグルカゴンをはじめ,ホルモン/液性因子による肝臓の糖代謝調節の重要性は確立されたものといえよう.一方で最近の動物実験の飛躍的進歩により,再び,臓器間神経ネットワークによる肝臓の糖代謝調節が注目を集めている.
従来,肝臓における糖代謝は,交感神経や副交感神経によっても制御されていることがよく知られていた.一方,これらの自律神経系の統御中枢である脳(特に視床下部)のどのような変化が,どのように自律神経の活性を調節し,肝臓の糖代謝を制御しているのか不明の点も多く残っていたが,最近の研究成果はこれらを明らかにしつつある.さらに,肝臓が感知する糖・エネルギー代謝情報が,逆にどのように神経シグナルとして脳に伝達され,どのような代謝レスポンスを引き起こすのかについても,マウス・ラットでの研究を中心に解明されつつある.
本稿では,「肝臓に至る」あるいは「肝臓から発信される」糖代謝調節シグナルを,臓器間神経ネットワークに焦点を絞って概説する.また,インスリンが肝臓の糖代謝調節に及ぼす「直接的」あるいは「脳を介する間接的」な影響について,最近の知見を紹介したい.
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