糖尿病重症合併症患者の語りとこころのケア

Caring for the diabetic patients with severe complications

はじめに

　筆者らが糖尿病にかかわり始め出したころには，糖尿病は3大合併症を伴うと学んだ．すなわち，網膜症，腎症，神経障害でありトリオパチーと呼ばれていた．その後，3種類の動脈硬化性疾患が加わり，最近では歯周病，脂肪肝，さらには認知症や癌も合併症として取り上げられるようになった．

　合併症は何十年の経過で徐々に進行していくものであるが，DCCTやUKPDSなどの大規模臨床試験とそれに続く長期観察により，その全体像がかなり明らかになってきた．医師として一生涯をかけなければ知り得なかったことが，それらの研究により垣間見ることができるようになった．

　医師はより強い証拠に裏付けられた診療ができるようになったと言える．なぜならばわれわれは，合併症に関して少なくとも30年程度の未来を予測予知できるようになったのだから…．