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最近の20年間で,糖尿病とうつ病に関して多くの研究が行われ,両者の間の強い関係が示唆されてきた.まず,糖尿病の発症とうつ病の発症については,両方向性の関係が存在する.疫学研究におけるうつ病のスクリーニング・ツールであるCES-D(center for epidemilogic studies depression scale)と糖尿病との関連を検討したコホート研究では,ベースラインのCES-Dのスコアが10点上昇するごとに,その後の2型糖尿病発症のリスクが約1.1倍上昇することが明らかになっており,逆にベースライン時に2型糖尿病を有している場合,その後のうつ病の発症リスクが1.54倍になる1).うつ病の有病率についてメタ分析を行った研究の結果をBox 1に示すが2),非糖尿病患者と比較すると,糖尿病患者におけるうつ病の有病割合は実際に高い.メタ分析に採用されたすべての研究の結果を統合すると,コントロール群におけるうつ病の有病割合が11.4%だったのに対して,糖尿病患者におけるうつ病の有病割合は20.5%であった.糖尿病に併存するうつ病は,その有病割合が高いだけではなく,糖尿病関連のアウトカムとも関連しており,うつ病を合併している場合には,血糖コントロールが悪いことがメタ分析で示されている3).さらに,合併症の併存割合も高く4),死亡率も高い5).これらの多くの研究が示した結果の一貫性から,実際に十分に行われているかどうかは別として,糖尿病患者の血糖コントロールを改善してアウトカムを改善するために,うつ病を見つけて適切に治療することは非常に重要なことであると信じられてきた.PubMedなどのデータベースを検索すると,糖尿病に併存するうつ病のスクリーニング方法や薬物治療の論文が多くヒットする.糖尿病患者に併存するうつ病を併存して,適切に治療することが,糖尿病関連のアウトカムを改善するために重要であると,筆者自身も信じていた.しかし,この3~4年の間に行われた最新の研究により,うつ病と糖尿病の間にはさらに複雑な関係が存在する可能性が示されるようになった.糖尿病とうつ病の間の関係は,以前考えられていたほど単純ではないのかもしれない.本稿では,糖尿病とうつ病との間の関係について最近明らかになってきた知見について解説する.
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