Japanese
English
特集 糖尿病の病態を「見える化」してみる―どこまでわかりやすくできるか―
合併症の病態を「見える化」する 糖尿病患者における動脈硬化症の発症と進展
Development and progression of arteriosclerosis in diabetic patients
関根 信夫
1
1東京厚生年金病院内科
キーワード:
①動脈硬化(症)
,
②糖尿病(性)大血管障害
,
③メタボリックシンドローム
,
④内臓脂肪
,
⑤アディポカイン
Keyword:
①動脈硬化(症)
,
②糖尿病(性)大血管障害
,
③メタボリックシンドローム
,
④内臓脂肪
,
⑤アディポカイン
pp.51-54
発行日 2010年1月15日
Published Date 2010/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1415101017
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
糖尿病は動脈硬化症の主要な危険因子であり,動脈硬化症は糖尿病患者の生命予後を改善するためにも克服すべき重要な慢性合併症である.動脈硬化性疾患のリスクは,しかしながら比較的血糖値の高くないレベル,すなわち境界型や,HbA1Cがいわゆる基準値の範囲内の段階から上昇する(Box 1)1).この点,細小血管障害いわゆる三大合併症のリスクが血糖コントロールに比例して(HbA1C6.5%以上付近から)線状に上昇していくこととは明らかに異なる.この理由としては,おそらく糖尿病発症初期に認められる食後過血糖が動脈硬化を促進しうることや,メタボリックシンドロームに代表されるように脂質代謝異常や高血圧など他の要因が関与している可能性などが考えられる.
糖尿病における動脈硬化症の発症・進展過程においては,その主要な病態であるインスリン抵抗性とインスリン分泌不全を基盤として,糖・脂質代謝異常に関連するさまざまな要因が複雑に絡み合っている(Box 2)2).第一に,インスリン作用低下による脂質代謝異常の関与が重要である.糖尿病ではリポ蛋白リパーゼ(LPL)活性の低下および肝におけるVLDL合成の増加により高トリグリセリド血症が生じやすい.これと関連して低HDL血症あるいはレムナントやsmall dense LDLといった動脈硬化惹起性の高い脂質を増加させる.一方,高血糖自体,酸化ストレスや血管内皮機能障害を介して動脈硬化の成立に大きく関与する.内皮機能障害を引き起こすメカニズムとしては,酸化ストレスのほか,蛋白の糖化(グリケーション),ポリオール経路やヘキソサミン経路,Cキナーゼの関与などが考えられている.
Copyright © 2010, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.