Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
糖尿病の治療についてどのように説明しますか
日々の診療において気をつけないと,つい血糖値だけを見て治療をしてしまいがちとなるので注意が必要である.常に慢性合併症の予防のために治療しているということを忘れずに診療しなければならない(周術期の血糖管理や慢性合併症の予防よりも急性代謝障害の予防が目的になるような高齢発症の糖尿病など例外はあるが).慢性合併症の危険因子は何も不良な血糖管理だけではない.脂肪肝・内臓脂肪蓄積や高血圧や高脂血症などもこれに含まれる1).よって血糖値だけにとらわれず,様々な代謝異常に気を配りつつ,しっかり合併症の状態のチェックを定期的に行わなければならない.
糖尿病は治るのか,いったん数値が良くなったらもう良いのか
これは特に糖尿病と診断されてから日が浅い患者からよく受ける質問である.あくまで2型糖尿病の患者の場合においてであるが,筆者は,
「治ることはないですが,治ったのと同じ状態にしておくことは可能です.一生上手に付き合っていくことが大事です」
と説明している.健康診断で診断された場合など比較的糖尿病歴が短い患者に生活習慣の介入を行うと,NGT(normal glucose tolerance,正常型)となってしまうということはよく経験する.では,NGTになったから治ったのかというと,そうではなく,生活習慣が元に戻るととたんに血糖値が上がってきてしまうわけである.血糖管理状態というものは非常に変動しうるものであり,どんなに血糖管理が不良であっても数カ月後にはNGTまで改善していることもあれば,逆に血糖管理が良好だったのに,数カ月後には非常に血糖管理が不良となっていることもある.筆者はこれを説明するのに前ページの下の図を用いている.これは,NGTが水面下,IGT(impaired glucose tolerance,境界型)が水面,糖尿病が水面上で血糖管理が悪いほど水面より高い位置に例えている.良い生活習慣をしていれば位置を下げることができ,悪い生活習慣をしていると位置が上がってしまう.
Copyright © 2006, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.