感染症フェロー便り[15]
ずっと入院?
松永 直久
1
1UCLA Affiliated Program in Infectious Diseases
pp.720-723
発行日 2007年8月15日
Published Date 2007/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414101209
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症例
61歳の男性,糖尿病および糖尿病性神経障害の既往歴あり.入院歴はなし.数カ月前に足の爪を切った後から,右足趾の腫脹・発赤が認められたが放置していた.やがて腫脹・発赤は右足全体に広がり,疼痛も発現して徐々に強くなり,入院前日より発熱・悪寒が出現したため,救急外来を受診した.血圧140/70mmHg,脈拍110/分,体温38.5℃,呼吸数20/分であった.右足底側の第2中足骨遠位部レベルに潰瘍が認められ,深度は骨にまで達していた.血液培養2セット採取ならびに深部組織の培養を提出後,アンピシリン・サルバクタム静注1回1.5g 6時間ごと,バンコマイシン静注1g 12時間ごとを開始し,入院となった.
この症例では,糖尿病患者の皮膚軟部組織感染症なので,グラム陽性,陰性,嫌気性菌も含めたpolymicrobialな感染を考慮していますが,入院歴がないこともあり,緑膿菌をターゲットから外して抗菌薬を投与しているようです.もちろん,入院歴があったり,敗血症性ショックがあって失敗が許されない場合には,empiric therapyとして緑膿菌を含める方法もあるかもしれません.また,足底部の潰瘍が骨まで到達しているので骨髄炎を起こしていることが推測されます.
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