"なぜ診断できないか"を科学する・6
結核は"何でもあり"
江村 正
1,2
1佐賀医科大学総合診療部
2現:ミシガン州立大学家庭医学科
pp.561
発行日 2002年6月15日
Published Date 2002/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414903553
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診断がなかなかつかずに困るものに,結核菌感染症がある.典型的な空洞を有する肺結核に遭遇することは稀である.当科では,原因不明の胸水で精査を行うも確定診断が得られず,臨床経過より結核性胸膜炎と診断して,抗結核剤を開始したところ改善をみたという例が多い.結核性胸膜炎では,リンパ球優位の滲出性胸水というだけで,細菌学的検査も病理学的検査も陰性であることが少なくない.これらの検査は,もし陽性所見が得られれば診断が確定するので,特異度は100%であるが,感度が低いので,所見が得られなくても結核を否定してはならない.胸水中のadenosine deaminase (ADA)が診断に役立つといわれているが,過信は禁物である.ADAが高くなくても結核を否定してはいけない.最近経験した摂食障害の若年女性の症例では,ADAは正常であった.
結核菌感染症は,肺結核や結核性胸膜炎だけではない.肺外結核には,筆者が経験しただけでも,結核性髄膜炎,頸部リンパ節結核,結核性腹膜炎,結核性脊椎炎があり,その他教科書的にも,腸結核,腎結核,結核性副睾丸炎,結核性卵管炎,副腎結核,結核性心内膜炎,皮膚結核など挙げればきりがない.粟粒結核であれば,眼底・肝・骨髄にも病変が生じうる.膵腫瘤の精査で入院し,膵結核であった症例報告を聞いたこともある.
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