特集 症例から学ぶクリニカル・ルール
クリニカル・ルール(診療上の原則)の意義
福井 次矢
1
1京都大学医学部附属病院総合診療部
pp.8-9
発行日 2002年1月15日
Published Date 2002/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414903429
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"Listen to the patient, he is telling you the diagnosis."(患者の話に耳を傾けなさい.あなたに診断を告げてくれているのだから)とは,医療面接の重要性を見事に表したWilliam Oslerの文章である.研修医の頃,あらゆる検査をしても診断がつかず,診断に苦慮した不明熱の患者を受け持ったことがある.その折に,1週間に一度は病歴をゼロから取り直すよう指導医から言われ,このOslerの言葉を聴いた覚えがある.この患者では,数週間後に生検が可能なリンパ節の腫大(悪性リンパ腫と診断された)が認められるようになるまで,数回,病歴を聴き直したものである.また,ちょうどこの頃,"Time is the best diagnostician."(時間は最も偉大な診断医である)という文章もどこかで読んで,この患者の臨床経過とともに私の脳裏に深く刻み込まれた.以来,私は,いまや格言ともいえるこれらの原則を,診断が難しい患者に出会った時の‘Guiding Rule’(道標)として思い浮かべるのである.
読者の先生方の多くも,診断や治療のさまざまな場面で,診療を進める道標となるようなこのような原則(クリニカル・ルール)をお持ちのことと思う1,2).
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