特集 公衆衛生と監察医制度
監察医制度の公衆衛生対策上の意義
的場 梁次
1
,
黒木 尚長
1
1大阪大学大学院社会医学専攻法医学教室
pp.264-268
発行日 2005年4月1日
Published Date 2005/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401100058
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昭和21年4月30日に大阪府監察医事務所が開設されたが,図1に現在までの大阪府監察医事務所における検案,解剖数を示すように,ここ10年で検案数は1.5倍に増加している.死因別に見ると,自殺や事故等の外因死の数はほとんど変わらないか,微増であり,病死の割合が増えていることがわかる.また年齢別に見ると,図2のごとく,50歳以下の青壮年層は減少しているが,60歳以上の中高齢者層,特に70歳以上の高齢者が増加している.これらの多くは老夫婦,あるいは独居老人の死である.
高齢者の独居変死(孤独死)
大阪府監察医事務所は,大阪市内のほとんどの独居高齢者の異状死体を扱っているが,黒木ら1)の調査によると,2001年のデータでは,70歳以上の独居高齢者の異状死体は,男性266例,女性247例あり,そのうち70歳代は男性190例,女性134例,80歳代は男性70例,女性93例,90歳以上は男性6例,女性20例であった.1990年と比べると約2.8倍に増加していた.
死因は,循環器系疾患72%が圧倒的に多く,これらは,心疾患61%,虚血性心疾患37%,高血圧性心疾患18%,その他心疾患6%,脳血管疾患(脳出血やくも膜下出血など)9%,血管系疾患2%により構成された.その他,感染症6%,消化器疾患6%,悪性新生物5%,呼吸器疾患5%であった.これら高齢独居者の中には,がんの末期で退院を余儀なくされ,死亡している事例もあり,今後高齢社会においていかにケアを行うかは重要な問題である.
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