漢方的発想を生かした治療学・1【新連載】
漢方的発想を生かした治療学の展開
丁 宗鐵
1
1東京大学医学部生体防御機能学
pp.59-62
発行日 2001年1月15日
Published Date 2001/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414903170
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臨床薬理学ではなく本来の治療学を
近年,実際の治療薬剤の選択法,用量,投与期間,休薬,廃剤のタイミングなど治療上の診断方法,予後の推定のための学問領域を臨床薬理学と呼ぶようになってしまった.しかし臨床薬理学といったのでは,動物実験の代わりに人体を用いる薬理学や臨床家の参考になる薬理学にとどまるおそれがある.現在の臨床薬理学はあくまで治療学の一部でしかあり得ない.
本来の治療学とは,実際の患者を目の前にした臨床において確かな指針となるべきものである.その研究目的も,薬物のいかなる作用がいかなる患者に対し,治療の目的に適合するものであるか,すなわち最も有効となる適用条件であるのかを明らかにするものである.単に事実としての作用の研究(事実判断)ではなく,治療に対する価値の判断を求める(価値判断)ものである.具体的に,個体の維持ならびに生命の発展を目的として計量的刺激を人体に適用する方針および方法,ならびにその根拠を提示できるものでなければならない.したがって,治療学は指示あるいは適応を科学化することである.この考え方は漢方,東洋医学における「証」に従って治療することに極めてよく似ている.
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