特集 眼科専門医に必要な「全身疾患と眼」のすべてコラム
眼科研究こぼれ話
臨床的な発想を大切に
宇野 敏彦
1
1愛媛大学
pp.185
発行日 2007年10月30日
Published Date 2007/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410102022
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研究について私は偉そうなことを言える立場にはないが,学会に参加して「これはおもしろい研究だ」と感じるものは必ず臨床的な発想から生まれているように思う。基礎医学に精通している少数の眼科医には無縁な話かもしれないが,大方の眼科領域の研究は既存の基礎医学の研究手法を眼科医独自の発想から応用したものが多い。そして1つの疾患の病態がわかる,治療法への道筋が開ける,といった研究結果に皆注目するのだろう。とすれば,研究の第一歩は「いまどのような疾患が問題となっているのか」「この疾患はなぜこのような所見を呈するのか」を診察室で考えることになる。
私は20年近く前の研修医時代,「レーザー虹彩切開術(LI)後の症例で核白内障が速く進行するのはなぜだろう」と考えた。緑内障発作を治療する切り札であるが,実はとんでもない副作用があるのではないだろうかと疑念を抱くようになった。長い年月が過ぎ,LI後の水疱性角膜症が増えているのが話題になってきた。LIが水疱性角膜症の原因か。とすればLI切開窓からの房水の出入りに鍵がありそうだ! 発想はするも腰の重い私の代りに緻密な解析を得意とするY氏が具体化してくれた。LI切開窓からの「ジェット噴流」は想像以上のものであった。水疱性角膜症発症の一因と信じ,現在も解析は続いている。
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