臨床のトピックス
Jカーブ現象を検証する
新保 卓郎
1
1京都大学医学部附属病院総合診療部
pp.50-53
発行日 2001年1月15日
Published Date 2001/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414903167
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高血圧の治療において,Jカーブ現象は長い間議論の的となっている.Jカーブ現象とは,特に虚血性心疾患や脳血管障害の既往がある患者で,拡張期血圧(DBP)を低下させ過ぎると心血管事故の発症率が高くなるというものである.これが事実なら,臨床医は積極的な降圧療法を行い難い.特に高齢者のisolated systolic hypertension (ISH)ではすでにDBPが低く,これに降圧剤を使用することは躊躇される.
SHEP (Systolic Hypertension in the Elderly Program)研究1)やHOT (Hypertension Optimal Treatment)研究2)では,積極的な降圧療法が支持された.しかし,その後もJカーブ現象についての議論は続いている.混乱の原因の1つは,無治療でも自然にJカーブ現象が生じることであろう.動脈硬化により,動脈弾性は低下し脈圧が増大する3).そして,脈圧の増大は平均血圧とは独立して心血管事故の危険因子であることが示されてきた4).すなわち,DBP低値群は脈圧が大きく,本来高危険群でありうる.これとは別に,治療による降圧が心血管事故の危険性を高めるか否かが検討されなければならない.このための工夫が臨床研究には求められる.
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