JIM臨床画像コレクション
聴神経腫瘍の1例
早川 美奈子
1
1聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院放射線科
pp.848
発行日 1999年9月15日
Published Date 1999/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414902823
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聴神経鞘腫は,神経鞘のシュワン細胞から発生する境界明瞭で圧排性に発育する良性腫瘍である.原発性脳腫瘍の8~10%で,小脳橋角部腫瘍の80~90%を占めるといわれている.第8脳神経(上下前庭神経,蝸牛神経)のうち,上前庭神経から発生することが多い.約95%は片側性だが,神経線維腫症では両側性に発生することがある.聴力低下,耳鳴りを初発症状とし,めまいや平衡障害を伴うこともある.内耳道内に限局する腫瘍では症状を示さないものもあるが,腫瘍の発育に従って三叉神経,顔面神経,脳幹,小脳への圧迫症状や頭蓋内圧充進症状を呈するようになる.
画像所見については以下のような特徴があげられる.頭部単純写真では患側の内耳道拡大が認められることがあり,この所見はCTやMRIでも観察される.単純CTで多くは等吸収値を示し,石灰化はまれである.造影CTにて良好な造影効果を示すが,嚢胞性変性や壊死を伴っていることもある.MRIではT2強調像にて高信号を呈する場合が多く,T1強調像では脳皮質と同等の信号か,やや低信号の場合が多い.造影にてCT同様に,強い増強効果がみられ,大きい腫瘤では嚢胞性変性を伴う.内耳道に限局する小さい腫瘍では薄いスライスとGd-DTPAによる造影検査が必須である.写真は造影T1強調像だが,左小脳橋角部に境界明瞭な内耳道まで進展する腫瘤(矢印)を認める.血管撮影上は,上小脳動脈の偏位を認めることがあるが,腫瘍濃染は認めない.
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