特集 最新の診療NAVI―日常診療必携
Ⅱ.難聴診療NAVI
1.聴神経腫瘍
村上 信五
1
,
高橋 真理子
1
1名古屋市立大学大学院医学研究科耳鼻咽喉・頭頸部外科学講座
pp.35-39
発行日 2012年4月30日
Published Date 2012/4/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411102129
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Ⅰ 疾患の概説
聴神経腫瘍は第Ⅷ脳神経に発生する良性の神経鞘腫で,発症率は人口5~10万人当たり1人と,比較的まれな疾患である。大部分が内耳道内の前庭神経から発生し,病理組織的には紡錘状細胞が観兵様配列(palisading)を呈するAntony A型と粗な網状構造を呈すAntony B型,および両者の混在型がある。一側性の難聴と耳鳴り,めまいで発症することが多く,腫瘍の増大とともに近隣する脳神経を圧排し,顔面神経麻痺や三叉神経麻痺が発現する。さらに腫瘍が増大すると脳幹圧迫症状や小脳失調を呈し,最後には中脳水道を閉塞して水頭症から死に至る疾患である。一方,両側性に発症する聴神経腫瘍も存在し,神経線維腫2型(Neurofibromatosis Type 2:NF 2)といわれている。一側性の聴神経腫瘍と異なり遺伝的素因が強く,第22染色体長腕(22q11.21-q13.1)に原因遺伝子を有し,聴神経以外の脳神経や脊髄に神経線維腫が多発することがある。
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