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Ⅰ.は じ め に
ガンマナイフの普及により聴神経腫瘍に対する手術の役割は大きく変化した.3cm未満の腫瘍の場合,聴力温存率,顔面神経麻痺の出現率のいずれもガンマナイフのほうが優れている状況のなかで,手術に求められているのは,「十分に経験を積んだ術者による合併症の出現の可能性を最大限に予防した」手術である5,6).積極的な手術の適応となる3cm以上の症例の場合,術前には有効聴力の保たれていないことが多く顔面神経の温存が大きな達成目標となる.しかし,顔面神経温存の手技は腫瘍サイズが大きくなるほど難易度が高くなり,経験と技術が要求される.また,有効聴力の残っている症例でも根治性を求めて手術を希望された場合には,顔面神経,聴力の温存に最大限の努力を払わなければならない.ガンマナイフがすべての聴神経腫瘍症例に適応していない以上,「十分に経験を積んだ術者」となるための技術の習熟は不可避であることは否めない12).3cm未満の腫瘍の場合,腫瘍の根治性,顔面神経機能,有効聴力の有無,年齢,性別など個々の症例に応じて判断を必要とする.この中でも積極的な手術の適応として,有効聴力の失われている症例,大きな囊胞を有する症例,根治的治療が望まれる場合などが考えられる4).しかし,ガンマナイフの最大の利点は,合併症出現率が低いこと,短い入院期間での治療が可能なことであり,手術を選択した場合においても顔面神経麻痺や聴力障害のみならず,その他の合併症の出現は最小限にとどめることが要求されていることを忘れてはならない9).
われわれの施設では聴神経腫瘍の場合,腫瘍のサイズにかかわらず全例lateral suboccipital approachによる摘出を行っている.本アプローチは,各施設や術者それぞれに経験や工夫の反映される手技であるため本稿の内容は普遍的なものではないが,われわれの施設で行う内耳道内腫瘍の摘出,合併症予防の工夫を中心に手術手技の紹介を行う.
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