再評価後の漢方治療入門―もう一度随証治療・6
麦門冬湯と竹筎温胆湯(その2)
坂口 佳司
1
1坂口循環器科内科医院
pp.551-553
発行日 1999年6月15日
Published Date 1999/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414902756
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
前回および今回のテーマは,麦門冬湯と竹筎温胆湯を呼吸器感染症の回復過程で,とくに咳嗽に対して,どのように使用するのがよいかという比較検討を行うことである.麦門冬湯は前回に解説したように古代の『金匱要略』に書かれた処方であるのに対し,竹筎温胆湯は16世紀の『万病回春』に記載されている.「温胆」というのは,文字どおり「胆」を温めるという古代中国の概念に基づく.胆が冷えると,ものに驚きやすくなり,夢を見て安眠ができなくなり,気鬱の症状が現れるが,この対策として胆を温めることによって睡眠をとらせるという処方がつくられた.同様に「肝」を鎮めて鎮静をはかるために,「抑肝」散という処方もある.いずれもトランキライザーのない時代に,鎮静をはかるための処方として,漢方医学なりの知恵の結晶として考えられたと理解していただくのがよいと思う.
Copyright © 1999, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.