JIM臨床画像コレクション
大腸アメーバ症とAIDS
今西 幸市
1
,
宗像 博美
1
,
白潟 智一
1
1湘南鎌倉総合病院消化器内科
pp.94
発行日 1999年1月15日
Published Date 1999/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414902648
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近年,わが国においても日々の診療で後天性免疫不全(acquired immunodeficiency syndrome:AIDS)に遭遇することがまれでなくなってきている.今回は,大腸アメーバ症を契機にAIDSと診断された症例を呈示した.
症例は53歳,男性.約2カ月前より,5~6行/日の軟便から水様便および約20kgの体重減少を認め,近医より紹介入院となった.右図は大腸内視鏡像で,直腸からS状結腸にかけて比較的大きな類円形の潰瘍が散在し,一部に偽膜の付着を認めた.左図は生検組織像で,表層上皮の脱落した間質に鮮やかな赤紫色を示すアメーバ虫体を認めた(PAS染色,×200).大腸アメーバ症の確定診断に組織学的検索は欠かせないが,生検での陽性率は高くない.検便(とくに粘血液)および生検で白苔を採取し暗視野顕微鏡で観察することで,赤血球を貧食したアメーバを認めることができる.本症が強く疑われる場合は血清アメーバ抗体価の測定が有効である.国内で診断される大腸アメーバ症は概してアフタ様潰瘍などの軽症が多いといわれているが,本症例は下掘れ潰瘍を思わせる所見で,中等症以上であった.また,体重減少が著明でかつ同性愛者であったことにより,AIDSが疑われた.抗HIV-1抗体は陽性,抗HIV-2抗体は陰性.CD4/CD8は0.19(0.6~2.9)と低下していた.以上よりAIDSと診断した.
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