Update '97
下部直腸カルチノイドの治療方針
高橋 慶一
1
1東京都立駒込病院外科
pp.781
発行日 1997年9月15日
Published Date 1997/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414902254
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カルチノイドは1907年Oberndorferが最初に「Karzinoid」と命名した腫瘍で,腺癌に似ているが,腺癌よりも良性の様相を呈する腫瘍であると定義した.1997年のCancer1)で8,305例という膨大な数のカルチノイドについての検討がなされている.部位別頻度は,消化管が73.7%,気管支・肺が25.1%を占めた.消化管では小腸が28.7%で最も多く,虫垂18.9%,直腸12.6%であった.5年生存率は虫垂が85.9%,気管支・肺76.6%,直腸72.2%,小腸55.4%で,小腸の予後が不良であった.
下部直腸カルチノイドは,腫瘍径,局在,患者のQOL (quality of life;生活の質)などから治療に際して十分な検討を要する疾患で,局所切除で十分な予後良好なものから,リンパ節転移,血行性転移を伴う予後不良なものまであり,治療方法の選択に苦慮することが多い.1997年にAnderson Cancer Centerからの44例の直腸カルチノイドの解析がある2).44例中13例(30%)は初回治療時遠隔転移陽性であった.腫瘍最大径別5年無再発健存率は,1cm未満(n=16):100%,1cm以上2cm未満(n=8):73%,2cm以上(n=4):25%で,有意に1cm未満の症例の予後が良好であった.
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