JIM臨床画像コレクション
気管支喘息との鑑別―adenoid cystic carcinomaの頸部X線所見
青木 誠
1
1国立東京第二病院総合診療科
pp.725
発行日 1997年9月15日
Published Date 1997/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414902235
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患者は35歳女性で,約6カ月前から息苦しさを自覚し,夜間によく眠れないこともあった.軽度の喘鳴もあり,喘息として治療を受けていたが症状は一進一退の状態であった.診察すると,呼吸数は24/分で,呼気の延長はなく,胸部に比して頸部で特に強い吸気性のstridorを聴取した.胸部X線写真では,有意な異常所見なく,軟部撮影条件の頸部X線写真側面像で気管内の腫瘤影(矢印)を認め,内視鏡検査で腫瘍性病変が確認された.手術治療を行い(病理組織診断はadenoid cystic carcinoma),術後,呼吸困難,stridorは消失し,患者は5年後の現在も健在である.
気管支喘息との鑑別を要する疾患の中に,上気道の異物や腫瘍,気管支結核などが挙げられている.気管病変は聴診が大切とされ,この症例でも吸気性のstridorが特徴的であった.急性喉頭蓋炎時の"thumb sign"(炎症により腫大した喉頭髄が親指状の腫大像を示す),咽後膿瘍の際の頸椎と気管壁開大像や軟部組織の腫瘍陰影など,見る目があれば得られる情報は多いとされ,頸部の単純撮影X線写真を見直す機会を与えてくれた症例であった.
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