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甲状腺髄様癌とRET癌遺伝子
三村 孝
1
1伊藤病院
pp.779
発行日 1996年9月15日
Published Date 1996/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414901924
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甲状腺髄様癌は家族性と散発性とに分けられる.家族性には,いわゆる家族性髄様癌(familial medullary thyroid carcinoma,FMTC)と,多発性内分泌腺腫症(multiple endocrine neoplasia,MEN)の2A,2B型の一分症である場合とが含まれる.従来,家族性髄様癌の家系調査は,甲状腺腫の有無と血中CEA,カルシトニンの測定により判定されていた.
最近,家族性髄様癌はRET癌遺伝子のアミノ酸置換を伴う点突然変異に起因することが明らかとなった.MEN 2AとFMTCでの変異は,Codon 609,611,618,620,634の細胞外ドメインでシステインに富む領域に,MEN 2Bの変異は細胞内部チロシンキナーゼドメインのCondo 918に集中していることが証明された.欧米では,MEN 2A,2Bの家系調査を行い,血中CEA,カルシトニンの上昇がなくとも,RET癌遺伝子の変異の認められるものに甲状腺状腺切除を行い,全例に微小な髄様癌あるいはC細胞の過形成が認められたと報告されている.今後このような遺伝子診断が増えていくことが予想される.しかし,MEN 2AとFMTCが同じ変異を有すること,散発性髄様癌の症例でも,MEN 2Bと同じ変異が約1/3で検出されることなど,変異RET遺伝子だけでは疾患の表現型の違いを説明できない問題も残っている.
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