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女性ホルモン剤による「飽食のつけ」?
高松 潔
1
,
太田 博明
1
1慶應義塾大学医学部産婦人科学教室
pp.773
発行日 1996年9月15日
Published Date 1996/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414901922
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「人生80年」という本格的な高齢社会の到来により,高齢者の生活の質(QOL)の向上は急を要する社会問題となっている.特に女性においては,閉経というイベントを契機とするエストロゲンが消退してから過ごす期間は30有余年にもなってきたため,その対応策としてのホルモン補充療法(HRT)が行われつつある.欧米に遅れること約20年,本邦においてもここ5年くらい前からHRTが脚光を浴びている.今やマスコミにも取り上げられて,女性性の回復ばかりでなく,各種の退行期疾患に対して万能薬のような扱いまでされるなど,HRTは更年期医療のキーワードの1つとなっている.
確かにHRTは,更年期障害と呼ばれる不定愁訴を改善することは周知であり,骨粗鬆症,高脂血症,虚血性心疾患をはじめとする退行期疾患,さらには最近アルツハイマー病にまで効果があるとの報告がなされるなど,有用性が高いことには疑問の余地はない.しかし,一方で女性ホルモン剤による癌のリスクに関してはいまだ明確な結論が出てはいない.1995年米国でHRT施行者の乳癌発生の相対危険度(リスク)が未施行者の約1.4倍であるとの報告があり,新聞でも取り上げられたことは記憶に新しい.HRTによる癌のリスクの増加について最近の報告をまとめると以下のようになる.
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