JIM Report
移植医療はわが国で定着できるか
寺田 秀夫
1
1聖路加看護大学
pp.278-279
発行日 1996年3月15日
Published Date 1996/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414901784
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移植医療の進歩とわが国の現状
近年臓器移植の問題が広く取りあげられ,特に心臓や肝移植に論議が集中している.しかし輸血も液状の組織移植であり,現在もエホバの証人などは輸血を拒否している.また白血病や再生不良性貧血の根治を目指す骨髄移植も同じく臓器移植の1つであるが,反対意見はほとんどない.しかしある容積をもつ臓器の移植には反対の立場をとる人々が多い1)2).その理由の1つは角膜や腎は死後の移植でも組織が移植患者体内で十分再生し得るが,心,肝,肺などは死後つまり血流停止後に摘出された場合,移植が成功しないからである.ここに脳死の問題がある.さてわが国でも比較的よく行われている角膜移植についても,全国に46のアイバンクがあり,移植を受けた人は25,659人(1992年10月末)に達したが,米国では毎年4万眼が角膜移植に利用されている3).心臓移植では全世界で2万6,000例の移植が行われており,最近で毎年3,000例が行われ4),その生存率は10年間で約50%といわれるが5),わが国では今年3月まで約20人が海外で移植を受け,そのうち17例が元気に帰国しているに過ぎない4).
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