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炎症と冠動脈疾患
Inflammation and Coronary Artery Disease
溝渕 和久
1
1今西医院
pp.163
発行日 1995年2月15日
Published Date 1995/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414901432
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最近の研究によると,不安定狭心症の病因には冠動脈の局所的な炎症が関係していると示唆されている.今週号でLiuzzoらは急性期反応物質であるCRPと血清アミロイドA蛋白が,不安定狭心症(CKと心トロポニンT測定により急性心筋梗塞は否定されている)と診断された患者の多くで増加していたことを報告した.急性期反応物質が増加していた患者はそれが正常であった患者と比べて,より好ましくない臨床経過をとった.急性期反応物質の増加は繰り返す胸痛,心筋梗塞および冠動脈再建術の頻度が高いことと関連した.
その炎症反応の刺激の源として以下の2つが考えられる.①不安定狭心症患者では冠動脈において炎症細胞の浸潤が増加している証拠がある.②虚血発作を繰り返すことにより,心筋内あるいはその微細血管系で炎症反応が誘導される可能性がある.冠動脈へ炎症細胞が浸潤している現象は特に重要である.それは最近とみに動脈硬化が高コレステロール血症,高血圧,喫煙などの代謝的,物理的あるいは環境的傷害に対する反応の結果生じた慢性炎症性疾患と考えられてきているからである.動脈硬化を炎症性疾患と捉えるなら,不安定狭心症および心筋梗塞の病因に新しい視点が開ける.慢性炎症の急性悪化あるいは活性化により,動脈組織が破壊されプラーク内の血栓形成物質に暴露し,血栓が形成され冠血流量が急激に減少する.
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