Dear Doctors―医師への手紙
「先生」からの挨拶
浅海 奈津美
1
1東京都リハビリテーション病院
pp.27
発行日 1993年1月15日
Published Date 1993/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414900698
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以前患者さんが,「さっき○○先生と廊下ですれ違ったときに,先生の方から挨拶して下さった.私も病院通いは長いけれどもこんな経験は初めてだ.」と感激した面もちで話してくれたことがあります.そのドクターは大病院の部長級の,臨床や部門管理の傍ら研究や講演もバリバリにこなされている「エライお医者さん」で,患者さんもそれだからこそ感激もひとしおだったというわけです.その先生は,患者さんには敬語を使って話されます.看護婦やセラピストに指示をするときでも,反論を躊躇させるような威圧的な雰囲気がありません.病棟ではパートの掃除婦や看護助手の名前までちゃんとご存じで気軽に声をかけていらっしゃいます.
病院では誰よりもドクターの皆さんが仕事や勉強に時間を割き,医療行為への責任を負い,高いストレスの中で仕事をされています.人の生命にかかわるような決断をせまられる困難な状況において全力でそれに対処される,ゆえに私たちはドクターを尊敬の念を持って先生とお呼びするのです.しかしひとたび個人同志の関係に立ち返って,「先生」と,闘病中の患者さんや若いドクターにとっては親ほどの歳の他職員との人間関係を考えてみると,それは決して一律に「尊敬される人」と「尊敬する人」という関係ではないはずです.かのドクターの,おそらくご自身は格別意識していないさりげない声かけや言葉の選び方からは,人間としての相手に対する敬意が感じられます.
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