Drug Information 薬を安全,有効に使うには・3
メナテトレノン(ビタミンK2)注射剤によるショック
高橋 隆一
1
Ryuichi Takahashi
1
1国立東京第二病院
pp.328
発行日 1991年6月15日
Published Date 1991/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414900103
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メナテトレノン(ビタミンK2)注射剤は,他のビタミン剤と同様に点滴に気安く使われている.また単なる止血剤として作用機序を考慮せずに使われていることが多い.しかし,市販されて以来昨年1月までの17年間に182例に及ぶ多数例のショックまたはショック様症状を示した症例が報告され,その内の14例が死亡している.そのためこれまでに3回の緊急安全性情報が配られている.それにもかかわらず未だに症例が出ているので十分に注意して適応症例にのみ使って欲しい.
ビタミンKは,肝臓で合成される凝固因子の内,プロトロンビン(第II因子),第VII因子,第IX因子および第X因子の生合成に関与するビタミンで,その欠乏を生ずるとこれらの凝固因子の欠乏によって出血しやすくなったり,止血しにくくなるのである.したがって,ビタミンK欠乏以外の原因による出血には当然効果を期待できないし,ビタミンK欠乏があっても凝固因子の生合成が障害されている重症の肝疾患,例えば肝硬変症などの出血にも無効であるが,使われていることが多い.
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