法医学からみえる"臨床"・3
往診先での検屍の要点―立会検屍で赤恥をかいた医師
高濱 桂一
1
Keiichi Takahama
1
1宮崎医科大学法医学教室
pp.324-325
発行日 1991年6月15日
Published Date 1991/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414900102
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事例 198〇年,1月12日,司法解剖.
深夜,急にばあちゃんの具合が悪くなったと往診の依頼があり,行ってみると布団に寝かされた患者はすでに呼吸停止し,心音も聴取されず,死亡が確認された.高血圧で在宅治療中の患者でもあり,診断書は明朝取りに来るように言って帰院し,翌朝来院した嫁に「病死:脳出血の疑い」との死亡診断書(正しくは死体検案書でなければならないが)を手渡した.正午過ぎ,村の駐在所から電話があり,件のばあちゃんについて本署の係官が検視を行うので立会ってくれとのことで,理由を聞くと,隣家から駐在所に養子婿が殺したとの通報があったためという.どうしたことかと思いながら患家に行くと,数人の警察官らしい男たちが死体の着衣を脱がせており,そのうち背面腰部のビニールと絆創膏で厳重に被われた部分をはがすと,ドッと多量の血液が流れ出て刺創の存在が明らかとなり,医師の完全な見落としであることが明白となった.
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