Editorial
診断における初期診療技術教育のこれから,感染症を例に
志水 太郎
1
,
忽那 賢志
2
1ハワイ大学内科
2国立国際医療研究センター感染症内科・国際感染症センター
pp.679
発行日 2014年8月15日
Published Date 2014/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414103292
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ここ10年の総合診療領域における初期・後期研修を概観すると,病歴・身体診察・診断思考といった初期診療技術の訓練により重きを置いた“原点回帰”ともいえる臨床医学教育の機運が高まっている.これらの技術は客観化・可視化しにくい,デジタルというよりはアナログに属するものであるがゆえ,その比較的“非客観性”のため教育が体系化されにくく,また教育文化として広まりにくいという特徴がある.そのためこれらの技術はギルド的な“背中を見て覚える”型の教育がこれまで主であったし,その傾向は今後も残るだろう.しかし,広まりにくいからと言ってその教育文化は優先度を下げてよいものではないだろう.
さて,今回の企画は感染症である.場所を問わず感染症の診断はその初期診療技術が問われる分野の一つかもしれない.「不明熱」「免疫不全の感染症」のように診断を困難とするものから,「見ればわかる」というような疾患まで,ありとあらゆる検査が絨毯爆撃のように行われた後でさえ,診断の鍵を握るのが病歴や身体診察といった基本的診察手技であることもよく見られるからである.その意味では感染症という領域は特にこのアナログ文化が大活躍する分野といえるだろう.そのような診察技術を日ごろから磨いておけば,ひと目見ればわかる疾患は検査に進まずとも大きな時間・コストの回り道がなく最短距離で診断がつくだろうし,診断が困難な症例では,シンプルな基本手技を繰り返し毎日行うことで診断の緒が見つけられることもあるだろう.
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