シネマ解題 映画は楽しい考える糧[76]
「ハーヴェイ・ミルク」
浅井 篤
1
1熊本大学大学院生命科学研究部生命倫理学分野
pp.915
発行日 2013年10月15日
Published Date 2013/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414103015
- 有料閲覧
- 文献概要
観るべし!
そして,あなたの社会の見方が変わる
観るべし.書くべきことはこの一言に尽きます.今まで多くの映画のなかに描かれる生命・医療倫理問題や人権問題を取り上げてきましたが,このドキュメンタリーは自由,勇気,夢,人権,尊厳,理想,そして相互尊重の大切さを完璧に描いています.同時に差別,不寛容,偏見の恐ろしさも十分見せてくれます.1985年のアカデミー賞最優秀長編記録映画賞を受賞したこのノンフィクション作品は,観た者のその後の社会の見方を変えてしまうかもしれません.ゲイの権利獲得のために48年の生涯を捧げたハーヴェイ・ミルクというホモセクシャルの男性の一生が,87分に見事に凝縮されています.
映画は繋がります.大学の授業でジョナサン・デミ監督,トム・ハンクス主演の『フィラデルフィア』(1993年,米国)を取り上げる時,ホモセクシャル問題に言及する必要性が出てきました.ちょうどその時,ショーン・ペンがガス・ヴァン・サント監督の『ミルク』(2008年,米国)でアカデミー賞最優秀主演男優賞を獲得したことを知り,内容に関連性があり,観る価値があるなら学生にも勧めようと思い,仕事の合間に劇場に足を運びました.文字通りの傑作.「半年後には必ずDVDを購入するぞ」と心に決めていたところ,20年以上前に製作されたこのドキュメンタリー作品のDVDが再販になり入手・観賞した次第です.どちらも素晴らしい.
Copyright © 2013, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.