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Case
患者:56歳,男性.
数年前から月に1~2回,労作時に1分以内の胸痛があったが,放置していた.20歳代から頭痛(拍動性,5時間から2日続く,左側のみ,吐き気あり,痛みがひどいと仕事を休む)があったが,年に数回で,市販の痛み止めを1回飲むと良くなるので,医療機関の受診はなかった.
1カ月前からいつもの頭痛が悪化.他院にて,CT,MRI検査が行われたが,異常はなかった.非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)内服も一時的にしか頭痛が改善しないため,当院受診.高血圧症,糖尿病,脂質異常症の既往はなく,心疾患の家族歴,喫煙歴もなかった.NSAIDs以外の薬は飲んでいない.
来院時,バイタルサインに異常なく,身体所見・神経学的所見にも異常はなかった.胸痛の訴えを聞いた後,狭心症は否定できないと思いつつ,頭痛に話が及んだ後で,すっかり狭心症の可能性を忘れてしまった.頭痛はPOUND(表1)で5項目当てはまり,典型的な片頭痛発作と考えられた.予防薬のロメリジンとともに,片頭痛発作時にはトリプタン(スマトリプタン)を使うよう話をして,帰宅となった.
その顛末:外来終了後,カルテの整理をしていたところで,狭心症の可能性を説明するのを忘れていたことに気が付き,トリプタンは狭心症に禁忌であることを思い出し,冷汗が出た.慌てて患者さんに電話をしたところ,ちょうど1時間前にトリプタンを内服,その後胸痛が出たが,30分ほどで治まったとのことだった.すぐに再受診を説明,診察となった.
バイタルサインに問題なく,身体所見でも異常なし.心電図,胸部X線でも異常なし.採血でトロポニンT,CPK,Dダイマーは陰性.心筋梗塞,肺塞栓症,気胸は否定的と考えられた.心電図を繰り返し検査したが異常なく,一旦帰宅とした.後日,念のため負荷心電図,冠動脈CTを行ったが異常なく,狭心症は否定的であった.
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