特集 この組み合わせに注意!日常診療で陥りやすいpitfall
【病態別のpitfall!―私が経験したこの組み合わせはpitfall!】
骨粗鬆症薬での高カルシウム血症―認知症患者が入院すると…
松浦 武志
1
1札幌医科大学地域医療総合医学講座
pp.395-396
発行日 2013年5月15日
Published Date 2013/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414102844
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Case
患者:85歳,女性(145cm,40kg).
#1 高血圧,#2 骨粗鬆症,#3 アルツハイマー型認知症で外来通院中の一人暮らしの小柄な高齢女性が,左片側の胸水を指摘されて精査目的で総合診療科に入院となった.胸水穿刺が行われたが,結果は意外にも「漏出性」であった.しかし,入院時の一般採血では特に異常を認めず,肝機能正常(GOT/GPT=25/28),腎機能正常(Cre=0.95),心機能も正常(胸部写真や心エコー正常)であった.
片側胸水であったため,年齢から悪性疾患が疑われ,全身の精査が始まるとともに,胸水穿刺が繰り返された.入院期間は長引き,徐々に食欲が低下し,入院3週間目には日中夜間を問わず不穏状態となり,奇声を上げるなど奇妙な行動が出現した.当初は認知症の悪化や検査が続くことによるせん妄などが疑われたが,あまりにも行動が奇妙かつ治療抵抗性であるため,「意識障害」として鑑別を行ったところ,Ca 12.5mg/dl(Alb 3.2g/dl)であることが判明した(入院時Ca値は正常).
普段の内服薬には#2に対し,カルシウム製剤・活性化ビタミンD 製剤が処方されていた.ヘルパーに確認したところ,家にはほとんど手つかずの処方薬が大量に残されており,入院により服薬アドヒアランスが向上したことにより,ビタミンD過剰状態となったことが予想された.
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