連載 医療者からみた高齢者の「こころとからだ」・5
「高齢者施設」という場所での満足とは
高齢者の生活環境と「こころとからだ」を考える会
pp.895
発行日 2014年11月1日
Published Date 2014/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541200039
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前回までは心身の障害の度合いと心境を変数にして,高齢者の施設における生活の満足の度合いを形状と面積から考えてみた.しかし,それらの変数だけでは生活の「満足度」を表現しきれないことも指摘した通りである.変数としての心身の障害の度合いは「満足度」の必要条件であるため,どうしても例外は出てくる.もちろん,心身の障害は如実にそのときの「満足度」に影響するであろうが,高齢者それぞれ施設への入所に至った経緯や,それまで生きてきた背景も異なる.そうした諸要因が複雑に影響しあっていることは否定できない.
要するに,単純に心身の状態が良ければ満足するかと言えば,そうではないということだ.たとえばモノやカネが割と充足する今の時代,人々は「満足」を実感しているだろうか.豊かであるはず,満足であるはずなのに,生活の不安が拭いきれないのは高齢者に限ったことではないだろう.さらに,安心して暮らせる場やこころを許して暮らしていける隣人はいるだろうか.孤独感がないだろうか.
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