シネマ解題 映画は楽しい考える糧[53]
「ガタカ」
浅井 篤
1
1熊本大学大学院生命科学研究部生命倫理学分野
pp.945
発行日 2011年11月15日
Published Date 2011/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414102348
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「遺伝的完全化社会」でもがく主人公の姿
一般の人びとが抱く「生命倫理」問題のイメージを具現化した映画の定番.監督・脚本を担当したアンドリュー・ニコルの問題意識と生命倫理観,危機感がひしひしと伝わってきます.映画としても実におもしろく,鑑賞後には前向きになれるきわめてお得な一本ではないでしょうか.10年以上の前の作品ですが,SF映画には珍しく時がたっても古さを感じさせません.
舞台は近未来.遺伝子工学が著しく発達し,受精卵診断も遺伝子操作も出生した子どもの医学的な将来も瞬間的に判明する世の中になっています.ヴィンセントは両親の愛の結晶として普通に自然に生まれます.しかしたくさんの病気と,あくまでも可能性ですが,限られた寿命しかありませんでした.二人目の子どもをもつ時,ヴィンセントの両親は躊躇しつつも,遺伝子工学を用いて遺伝的に最善の子どもをもつ決心をします.その社会では皆がしていることでした.
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