コーヒーブレイク
検査と人格―映画『ガタカ』について
鈴木 晃仁
1
1慶應義塾大学経済学部
pp.286
発行日 2011年4月1日
Published Date 2011/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543103109
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今月から三回にわたって,文系の医療研究者の「コーヒーブレイク」にお付き合いください.
1990年代ころから,アメリカを中心に,メディカル・ヒューマニティーズという学問のジャンルが形成されている.バイオエシックス,医療人類学,医学史などをゆるく一つに括った領域で,哲学,人類学,歴史といった人文系の学問に携わる研究者と,医療について実地の経験をもちながらこれらの学問を学んだ研究者の双方がいる領域である.そのなかで比較的新しい分野で急成長をとげているのが「医学と文学」(Medicine and Literature)である.基本は,文学を中心に芸術作品から医療についての洞察を得ようとする学問である.かつてのバイオエシックスが,医療行為の倫理的な分析に基づいて,医療がしてよいこと・してはいけないことの間に境界を引いて法的な手続きを定めるという,行政による医療の規制ということに主眼をおいていたのに対し,「医学と文学」は,文学や芸術が与えてくれる人間性への深い洞察を医療を考えるうえで参考にしようという基本的な姿勢をもち,医療者にも人気が高い.その活発な活動の一端を知るには,ニューヨーク大学の医学部が10年以上にわたってウェブ上で構築してきたデータベース(The Literature, Arts, and Medicine Database)をご覧いただきたい.
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