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緒言
いわゆるアレルギー性鼻炎の治療には従来各種の方法が行われているが,その治療成績は必ずしも良好ではない。先ず原因療法としては抗原性物質による脱感作療法が理想的ではあるが,その発見は困難なことが多く実際にはpolyvalentの蛋白製剤が用いられている。又対症療法としては遊離したヒスタミン様物質の作用を抑制するために近時各種の抗ヒスタミン剤による治療が行われ,ある程度の効果を挙げている。尚この他鼻粘膜の局所貧血剤としてアドレナリン,エフェドリン製剤が使用され,又粘膜感受性の低下をはかるためレ線やラヂウムの照射,腐蝕,焼灼法もありさらに組織の過敏性を低下させるためカルシウム,硫酸マグネシア,あるいはビタミンCの静注なども実施されている。このうち抗ヒスタミン剤(以下抗ヒ剤と略す)は1937年Bovet及びStaubが研究発表した929F以来今日までに多種多様の製剤が紹介されているがこれら各種の抗ヒ剤を実際に使用してみると満足すべき効果を挙げうる場合と殆んど無効と思われる場合も少なからず存在する。近年アレルギー反応に際し従来より唱えられていたヒスタミン及びヒスタミン様物質の生成以外に,セロトニンの細胞外遊離もアレルギー反応成立の重要な一因となることが報告されて来た。今回抗ヒスタミン作用と抗セロトニン作用及び抗掻痒作用を有するタカリールを主としていわゆるアレルギー性鼻炎に使用して認められるべき効果を得たので報告する。
本剤は10-(1-methyl-3-pyrrolidymethyl)phenothiazineの塩酸塩で化学構造が示す如くphenothyazine系の抗ヒ剤であるが,その作用機序は従来の抗ヒ剤といささか異なり,細胞レベルにおいてその作用があるといわれ動物実験では著明な抗アナフィラキシー作用を有するとされている。構造式は次の通りである。
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