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予防および危険因子の除去
わが国における2008年の肺がんの死亡数は66,847人であり,悪性腫瘍の死因の第1位を占め,肺がんの死亡率を低下させることが重大な課題である.肺がんを引き起こす最大の危険因子は喫煙であり,肺がんの予防には禁煙が適切な方策である.JTの2008年の調査によると男性の喫煙率は39.5%,女性は12.9%であり,年々減少傾向にあるが,女性の喫煙率はほとんど変化していない.禁煙に伴い,小細胞がんや扁平上皮がんの罹患は減少傾向にある.ニコチン依存症の克服は本人の意志だけでは困難な場合が多く,禁煙補助剤や禁煙支援プログラムなどの禁煙治療が重要である.「禁煙治療のための標準手順書」が日本循環器学会,日本肺癌学会,日本癌学会より公表され,禁煙の手順と方法が具体的に解説されている.禁煙薬物療法を行うとプラセボよりも禁煙しやすいことが明らかになっており,禁煙補助薬として,ニコチンガムは薬局薬店で購入可能で,ニコチンパッチとバレニクリンは薬価収載されている.
職業性危険因子に石綿(アスベスト)が挙げられる.石綿は1970年代に輸入量がピークであったが,全面使用禁止となったのは2004年である.しかし現在でも建築物の解体などに従事する際にはきわめて注意を要する.腫瘍(中皮腫,肺がん)の発生までには30~40年かかると考えられており,今後急速に増加することが予想される.石綿による肺がんの認定には,発症リスクを2倍に高める量の暴露があったとみなされた場合で,医学所見として①胸膜プラークを認める,②第1型以上の石綿肺,③乾燥肺1g中5,000本の石綿小体または200万本以上(5μm超)の石綿線維が認められる場合である.
肺がんの化学予防として,ビタミンや抗炎症薬などの臨床試験が行われてきたが,有効性の証明された化学予防薬は存在しない.
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