シネマ解題 映画は楽しい考える糧[29]
「モンスター」
浅井 篤
1
1熊本大学大学院医学薬学研究部生命倫理学分野
pp.833
発行日 2009年11月15日
Published Date 2009/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414101802
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何が彼女を「モンスター」にしたのか?
まずは『JIM』本連載担当者さんに感謝します.鑑賞を勧めてもらわなければおそらく未見で終わった作品でしょう.実在した女死刑囚の人生をもとに,不幸な生い立ちから売春婦になり最後は連続殺人犯として処刑される女性の生き様を描いた作品というだけで敬遠していました.どう転んでも,観た後楽しい気分になれそうもないですから.では鑑賞後の実際の気分はどうだったか.ずっしり感というか,満足感が快いとでもいうのでしょうか,うまく表現できませんがすぐに二回目が観たくなりました.何人もの男を金と車のために殺したモンスター(これが彼女の通称です)の最後の捨て台詞に格好よさまで感じました.
自殺を考えていた売春婦のアイリーンがたまたま若い女性セルビーに出会い愛しあうようになり,二人は新生活を始めようとします.アイリーンは真っ当な職を探しますが,13歳から街に立っていた彼女は何の資格も学歴も技術もありません.生活費を稼ぐために再びもとの仕事に就きますが,運悪く変質者の客に捕まってしまい殺されかけ,逆に正当防衛で射殺してしまうのです.アイリーンはもう客は取りたくないのですがほかの働き口はなく,面倒見ると約束したセルビーが「お金,お金」とせびるので仕方なく再度客を取りました.今度の男は小児愛者らしく,彼女は激しい嫌悪感と憎悪を募らせ再び引き金を引いてしまいます.それからは愛するセルビーとの生活を維持するため,つまりお金と車を手に入れるために客になる男たちを次々殺してしまうのです.最後には,彼女に手を差し伸べようとした親切な初老男性まで撃ち殺します.
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