カンボジア看護紀行・2
任地モンコールボレーへ
手柴 房子
1
1国立東京第一病院手術室
pp.96-97
発行日 1966年5月1日
Published Date 1966/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661912746
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モンコールボレーへの道
澄みきった青空のもと,群生するヤシの間をぬって任地モンコールボレーへの350kmの旅についた時,わずか3日間滞在したにすぎないプノンペンの街に離れがたさを感じつつ炎天下の350kmの旅も今は,また言葉につくせぬほどの思い出多いものとなってしまいました。さわやかな初夏の日本から一足飛びに猛暑の国にやってきたのですから,暑さが身にこたえるのはもちろんのこと。半日にして肌はこげ目はやけつくような太陽にやられ,喉は,すっかり声を失ってしまったほどですが,それ以上に珍しい道中の風景が疲れゆく体より強く私たちの目を奪ってしまいました。ヤシの木々,バナナの畑,カポックの木々,遠々と続く広大な田園風景,時にはまっくろい衣しょうに身をかためた田植の入々にも何度か遭遇しましたが,ここに来てこの一帯(タイ,ラオス,カンボジア)を黒衣族と呼ぶのだと聞かされたことのあるのが思い出されました。お昼をすこし廻ったころより方々の川で水泳している子供たちをみかけましたが,その川の色がどこも同じように赤茶けてにごった色をしているのです。あとでわかったことですが,この国を流れている川の水は赤茶けてにごっているのが普通で,澄んだ水が流れているのはこの国でも2〜3カ所しかないようです。
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