シネマ解題 映画は楽しい考える糧[6]
「オール・アバウト・マイ・マザー」
浅井 篤
1
1熊本大学大学院医学薬学研究部生命倫理学分野
pp.1053
発行日 2007年12月15日
Published Date 2007/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414101306
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カラフルな登場人物に彩られた愛の物語
この作品を『JIM』読者の皆さんにどのように紹介したらいいのか.本稿を準備するにあたってずっと思いを巡らせていました.間違いなく多くの方に観てほしい傑作です.しかし,どう書けば自分の中にあるこの作品への気持ちを皆さんに伝えられるのか,筆力不足の私にはとても悩ましい作業です.「逞しくも魅力的な女性たちへの賛歌」「何ものにも囚われない自由な愛の物語」 「観た後にはとても人生に前向きになれる作品」などと表現すればいいでしょうか.いずれにせよ,この映画を好きになれる人とだったらぜひ友達になりたい,そう思わせる映画です.
メインのストーリーはいたってシンプルです.17歳の一人息子を亡くした傷心のシングルマザーのマヌエラが,亡き息子の「自分の父親を知りたい」という最後の望みを成就させるため元夫探しの旅に出ます.そしてさまざまな人々に出会い,関わり,助け,自分も新しい生命を得て立ち直るというお話です.ある意味で「よくある話」ですよね.一方,登場人物たちはかなり個性的だというべきでしょう.主人公のマヌエラは元舞台女優で,息子を失うまで看護師兼移植コーディネーターをしていました.マヌエラが旅先で再会する旧友アグラードは,男性から女性に性転換した売春婦で,豊かな胸とペニスがあります.
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