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Case
高熱で発症し,家族からの情報と全身診察で偽痛風と判明したケース
患者:92歳の女性.
病歴:脳梗塞後遺症と認知症にて寝たきり状態.神経因性膀胱による排尿障害があり尿道バルンカテーテルが留置されている.たびたび尿路感染を繰り返している既往がある.ある日,急な高熱とのことで緊急電話連絡が入った.
Dr.:また尿路感染だな…えーっと交換用のカテーテルセットと,尿培養,血液培養のセットと抗生物質(ロセフィン®)を持ってと…よし,準備万端!では出発.
―患者宅に到着
家族:すみませんこんな時間に…,なんか身体が熱いなと思って熱を測ったら38.5℃もあるもんでびっくりしまして.そういえば….
Dr.:(さえぎるように)あ~大丈夫です大丈夫です.また尿のほうからばい菌が入ったんですね.管が入ってるとどうしても感染を起こしやすいですしね.仕方ないですよ.
(すぐに診察に入り)えーっと意識レベルは悪くないし,血圧120/80mmHg,脈が86/分,呼吸数18/分,SpO296%でとりあえず敗血症様ではないぞと…肺の呼吸音も肺炎様じゃないし.やっぱり尿路感染だな.食事水分は何とか摂れてるんでしたよね.大丈夫ですよ.今の感じなら在宅で治療できると思いますよ.カテーテルもだいぶ汚れてますし,入れ替えをして尿の培養を採らせていただいて,あと血液検査と血液の培養を採らせていただいたうえでこの抗生物質(ロセフィン®)を点滴しておきますね.じゃあさっそく….
家族:あの…そういえば今日は体を動かす時に痛がる感じがあって,どうも左の膝を痛がってる感じがするんですが….
Dr.:まあ,寝たきりだと関節も硬くなってきますしね~.あちこち痛がるのはよくありますよ.どれどれ~,あっ….
―そこには明らかに関節液が貯留して腫れた膝関節があった.
関節穿刺にて,膿性ではないが黄色調で混濁した粘稠な関節液50mlが引けた.
細菌感染も否定はできないので,検体(尿,血液,関節液)採取後に抗生物質(ロセフィン®1g)点滴は施行して明日も訪問する旨お伝えし,帰院した.
帰院後検体を検査会社に提出するとともに,尿と関節液はグラム染色を施行.尿は細菌の貪食像を認めず.関節液は,白血球が多数見えるにもかかわらず細菌は見当たらず.偽痛風が疑われ,翌日からは抗生物質終了で消炎鎮痛薬(NSAIDs)内服で経過観察とした.発熱,膝関節炎は速やかに軽快した.数日後,関節液の結晶検査結果でピロリン酸カルシウム陽性であった.
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