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当院のような診療所では「何科に行けばよいのかわからないので,とりあえず先生のところに来ました」という相談が結構多い.このような「とりあえず受診」の代表的なものが今回の特集のような体重減少をはじめとした,臓器を特定できないような全身的な症状である.他にも,「上腕部外側のしこり」のように何科が専門に扱う疾患か患者には判断が難しい症状や,「めまいと下痢」のように複数の臓器系統にわたる症状にもよく出会う.その場でバシッと診断がつけば町医者としては格好良い.しかししばしば,すぐに対応すべきもの,少し時間をかけてもよいもの,という見極めをするにとどまり,「とりあえず経過観察」「とりあえず採血」のように「とりあえず返し」をするはめになる.今回の特集では,診断の「手がかり」と臨床医最大の武器である「時間」を用いた診断プロセスを「スーパー・アプローチ」と名づけ,実際の症例をもとに最終診断に至った過程を解説していただいた.各症例における臨床医の思考過程をたどることによって,焦点をしぼったスマートな診療ができるようになるであろう.
私の場合,悪性腫瘍など致死性の疾患が少しでも考えられる場合や,患者さんやそのご家族が希望する場合には,無理せず高次病院にお願いすることにしている.病院へのアクセスがよい都会の診療所という恵まれた環境なので可能なのかもしれないが,患者の期待は「私の診立て」と,「どこに精査をお願いするか」のアレンジにあるのだと理解している.ところが「とりあえず受診」な問題の場合は,病院の外来担当医表の中の,10以上もある専門医リストを眺めながら「うーん…」と悩んでしまうこともしばしばである.最近ではホームページで医師の略歴や専門分野が詳しく参照できる場合も多いが,医師の専門がわかっても,自分の専門以外の問題があった場合に適切な科を紹介してくれるのかなどの総合的な診断能力まではわからない.いろいろな意見はあるだろうが,病院にも総合的な診療に従事する診断能力の高い医師がいる部署は必要だと私は思う.
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