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Case
65歳,女性,主婦.夫・息子(3人)と同居.2年前に腹部膨満感が出現したためA病院に入院し,卵巣癌,腹膜転移,腹水と診断された.化学療法が開始され,2カ月に1回程度,短期入院のうえで継続されたが,腫瘍マーカー増加などのため断念した.
半年前から,毎月1回外来施行のレジメンに変更され,開始時には主治医から家族に「化学療法が効かなければ,生命予後は1年ぐらい」と説明があった.1カ月間保存的に治療を行うもイレウス症状が続き,外科コンサルテーションとなったが,人工肛門造設,バイパス術の適応にはならないと判断された.長期にわたる中心静脈栄養が必要になると考えられたため,埋め込み式IVHポートが造設された.イレウスに伴う腹痛,嘔吐,倦怠感の症状緩和目的で,緩和ケア医に紹介となる.また,この頃「一番の希望は食べられるようになること.先生にお任せします」という発言があった.
保存的治療を行うもイレウスの改善は認められず,週1回のタキソテール投与のレジメンが提案された.家族には,「新しい化学療法は1~2カ月で効果判定する.効果は5~10%.イレウスの解除は難しく,経鼻胃管が抜去できて経口摂取が可能になることはないだろう.これでも癌が進行するようなら,ターミナルケアになるだろう」と説明された.
患者自身は食べられるようになることを目標に,化学療法を受けることを希望し,開始となる.6回終了時点で,とくに強い嘔気・嘔吐はなく,CA125はほとんど変化がない.主治医の評価は「腫瘍の増大は抑えられているのではないか.大きな副作用が出なければ,毎週1回このレジメンを継続するのがよい.しかし経口摂取が可能になることはなく,中心静脈栄養の継続は必要であろう」であった.この頃,患者から「食べられるようになれば,家に帰りたい」との訴えがあった.また,入院病棟の看護師から,「今の状態ならば,中心静脈栄養を継続しながら在宅療養が可能ではないか.このまま化学療法を継続すれば,家に帰るタイミングを失うのではないか」と緩和ケア医に相談があった.
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