特集 医療危機と精神科医—第6回日本精神病理・精神療法学会 討論集会をめぐって
アポロギア
荻野 恒一
1
1南山大学文学部
pp.111-112
発行日 1970年2月15日
Published Date 1970/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405201572
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1)「医療危機の深刻な現状に直面して,いま精神科医はなにをなすべきか」という問題は,「いったい先輩たちはなにを考え,なにをしてきたか」を問いつめていく仕方で提出された。提出した側は,若い精神科医(あるいは若いと称する人たち)であり,問いつめられた側は,古い世代といわれる精神科医,具体的にはいままでに精神病理学界で仕事をつづけてきた人たち,とりわけ医学部の講座制につらなって仕事をしてきた人たちであった。そしてこうした問題提出,追求は,「結局なにもしてこなかった。のみならず直接的ないし間接的に医療危機を助長する結果をまねくような役割を果たしてきた」という告発,加えて「精神病理・精神療法学会も,このような古い世代の人たちの活動を助けてきたのであるから,真剣にこの事態を反省し,一旦,解体されるべきである」という勧告にまで発展していった。
2)「では本学会の解体後,どのような学会が理想的であるか」という建設的なビジョンは,まだ論ぜられなかった。ただいいうることは「旧来のものが解体されることが第一であり,旧来のものが存続するかぎり,無益であるだけでなく,有害であること」,および「これからの精神病理学と精神療法は,医療危機のなかに生きている精神科医が,この現状と斗う姿勢から創り出されるものであるべきこと」であったようである。
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