特集 知っておきたいゲノムの知識
ヒトゲノム計画でゲノムはどこまでわかったか
水島-菅野 純子
1
,
菅野 純夫
1
1東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センターゲノム構造解析分野
キーワード:
完全長cDNA
,
トランスクリプトーム
,
プロテオーム
,
ゲノム創薬
,
疾患感受性遺伝子
Keyword:
完全長cDNA
,
トランスクリプトーム
,
プロテオーム
,
ゲノム創薬
,
疾患感受性遺伝子
pp.106-109
発行日 2004年2月1日
Published Date 2004/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414101093
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2003年4月,ヒトゲノム配列が完全に決定された.アメリカでは国際コンソーシアム(コンソーシアムとは,研究共同体という意味)の指導者であるフランシス・コリンズがヒトゲノムの完全解読をブッシュ大統領に報告,日本でも榊佳之教授(理化学研究所・東京大学医科学研究所)や清水信義教授(慶應義塾大学)が小泉首相に報告するという形で発表を行っている.ヒトゲノムの完全な形がみえたことになる.ただし,それはAGCTの4文字の羅列であるにすぎず,そのどの部分が遺伝子として発現されるのかについて,完全にわかったわけではない1, 2).
ゲノムとは何か
さて,それでは「ゲノム」とは何だろうか?
簡単にいうと,「生命の設計図」で,生物の全遺伝情報が書き込まれている1セットの文字列のことである.その実体はDNA(Deoxyribo Nucle-ic Acids)で,ヌクレオチドがつながったものである.各ヌクレオチドに含まれている4種類の塩基,アデニン(A),グアニン(G),シトシン(C),チミン(T)が文字にあたり,これがどのような順番で並んでいるか(塩基配列)によって遺伝情報が表わされている.「遺伝情報」とは親から子に受け継がれ,子,孫へと伝えられていく(遺伝する)情報なのだが,そこに書かれている内容に従って,生命は形造られ,維持され,活動する.したがって,ゲノムの内容はとても重要で,この内容がなんらかの原因で書きかえられてしまった時(突然変異),癌などの病気が発症してくる.
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