EBM時代の生薬・方剤の使い方 [第12回・方剤編]
大建中湯―術後合併症に使用される効果と作用機序
杉山 貢
1
Mitsugi Sugiyama
1
1横浜市立大学医学部附属市民総合医療センター
pp.1072-1074
発行日 2004年12月1日
Published Date 2004/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414101090
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腹部外科領域では,手術手技の進歩と安全性の向上に伴い,良性疾患はもとより,悪性疾患の手術後でも長期生存例が増加している.さて一般に,悪性疾患の手術では臓器を大量に切除するため,手術後遠隔時には臓器欠損による機能障害によって,種々の症状が軽度ではあっても必ず発現する.また,悪性疾患に対する精神面での不安や社会的抑圧なども高じると,機能障害に基づく症状が助長され,癌化学療法などの協力も得られず,その意味では適切な治療への問題にも発展する.最悪の場合には,医師や医療への不信感を招くことにもなる.
最近,臓器の大量切除など疾患の根治性のみに主眼がおかれた手術治療に変わり,機能の温存や維持など,手術後の患者のいわゆる“Quality of Life”にも目を向けることの重要性が指摘されてきた.外科医としては,手術による疾患の根治を追求するのは当然であり,機能温存や術後合併症の回避のみを考えたため,根治性が損なわれるようなことがあってはならない.そこでまず,予後が変わらない範囲で,手術後でも機能温存や維持を考えることは大切である.次に,残存臓器の機能を維持するには,放射線や化学療法など,ほかの治療法を併用することで,外科手術を縮小する機能温存の考えと,手術自体は従来どおり根治性を追求し,結果として予想される障害を予防したり,残存した機能を補助する考えがある.後者の場合,機能低下に伴う障害や愁訴に対して,従来の西洋医学的治療だけでは副作用や期待する作用自体が強すぎたり,逆に術後ということで加減したりすると十分な効果が得られないことがある.こういった場合,漢方薬が患者の状態に調節的に作用し,有効となることがある.
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