特集 トラベルメディスンのすすめ
ミニレクチャー
SARS
川名 明彦
1
1国立国際医療センター呼吸器科
pp.499
発行日 2004年6月1日
Published Date 2004/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414100958
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重症急性呼吸器症候群(Severe acute respirato-ry syndrome : SARS)は2002~2003年に世界的な流行をもたらした21世紀最初の新興感染症1)で,原因微生物はSARSコロナウイルス(SARS-CoV)である.
2~10(中央値6)日の潜伏期間を経て,通常38℃以上の発熱,悪寒,筋肉痛,倦怠感などのインフルエンザ様症状で発病する2).発病2~7日後に乾性咳嗽,呼吸困難などの下気道症状が出現する.鼻汁,咽頭痛など上気道症状の頻度は比較的少ない.2週目以降に水様性下痢を呈することがある.検査では,末梢血リンパ球数の減少,軽度の血小板減少,CPK,LDH,ALTの上昇,Na,Kなど電解質の低下が報告されているが,特異的なものはない.胸部X線写真では初診時から肺炎像を認めることが多く,胸膜下,下肺野有意のすりガラス状陰影や限局性の実質性陰影がみられる.約半数は多発性・両側性に進展する.胸部CTではBOOP(閉塞性細気管支炎器質化肺炎)に類似する多発斑状影が報告されている.縦隔肺門リンパ節腫大,空洞,胸水貯留は稀である.
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