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イラクでの戦争が一段落した今,テレビのどの国のニュースを見てもSARS(重症急性呼吸器症候群)の話題が終始流れています.SARSは,どの国の経済へも多くの影響をおよぼしているようで,ここカンボジアでもその影響が顕著に見られています.観光客はめっきり減り,どこのレストランも観光名所も閑古鳥がないているようです.先月私が日本へ一時帰国した時の飛行機なんてガラガラでした.「3分の2が空席です」と航空会社の人が言っていましたからね.おかげでのびのびと手足を伸ばして帰ってくることができましたけど,あれじゃ,航空会社にもかなりのダメージだろうなとつくづく思いました.先日日本から来ていたボランティア医師がお寺巡りをしたのですが,「どこもだーれもいなかった」と言っていましたし,友人がやっているシェムリアップのレストランでも「この状態が半年も続いたら,お手上げだ」と言っていました.
SARSに青豆???
今のところカンボジアからのSARS患者はゼロということになっていますが(本当かなぁ???),いつ入ってきてもおかしくないわけですよね.人々もそれはそれは,SARSに対して敏感になっています.そんな時にはおかしな噂が広まるものです.いくつかご紹介しましょう.まず,“カンボジアは気温が高く,ウイルスは生き延びることができないから安心せよ”というもの.ちょっと待ってくださいよ.そんなことが本当なら,私,ナースを辞めます.
お次はSARSの予防に関する噂.数週間前のある日,風がものすごく強く吹いていました.すると,“風に乗ってSARSウイルスがベトナムから入ってくる.その予防のためには“茹でた青豆”を12時以降に食べること”という話が広まったのです.その日は青豆を求め,たくさんの人が右往左往し,夜中に起こされて青豆を食べろという訪問者があとを経たなかったそうです.幸い,我が家へは誰も来ませんでしたが,階下に住む大家さんの家では,電話が夜分遅くまで休む間もなくかかってきていました.やれやれ.
さらにおかしいのがこの話がどこから立ちのぼってきたかという点.誰が青豆がSARSの予防になると言い出したのかというと,“アメリカで双子が産まれ,その1人が生後2日で口が利けるようになり,その子がそのように言った”ということなのです.この噂を聞きつけて慌てて青豆を茹でたために,半生状態で食べた人が下痢をしてしまったなんていうおちもついているんです.どうです? おかしいでしょ.でも,正確な情報が入りにくい状況下では,こういうことも珍しくはないかもしれませんね.
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