特集 変貌する感染症
【トピックス】
SARSの今
川名 明彦
1
1防衛医科大学校内科(感染症)
キーワード:
SARS
,
新興感染症
,
コロナウイルス
,
人獣共通感染症
Keyword:
SARS
,
新興感染症
,
コロナウイルス
,
人獣共通感染症
pp.591-593
発行日 2008年7月15日
Published Date 2008/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414101465
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SARSの臨床
2003年,突如としてヒトの世界に現れたSARS(severe acute respiratory syndrome,重症急性呼吸器症候群)は重症肺炎を主症状とするウイルス感染症で,21世紀最初の新興感染症(J1)である1,2).SARSは短期間に世界に拡散し多くの犠牲者を出したが,9カ月程で終息した.それから5年近くが経過するが,これまでのところ流行は再燃していない.
SARSは新型コロナウイルスであるSARS-CoV(SARSコロナウイルス)の感染によって起こる3).2~10日(中央値4~5日)の潜伏期間の後,通常38℃以上の発熱と,悪寒,筋肉痛,頭痛,倦怠感などのいわゆるインフルエンザ様症状で発病する.発症後3~7日で乾性咳嗽,呼吸困難などの下気道症状が出現,胸部X線写真や胸部CT写真では,呼吸器症状を有す例のほぼ全例で肺浸潤影がみられる.検査所見では,末梢血リンパ球数減少,軽度の血小板減少,APTT延長,LDH・CPK・トランスアミナーゼの上昇,Na・Kなど電解質の低下がみられる.死亡率は,2003年の流行時には9.6%と報告された.
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