特集 人と動物の共通感染症・2 BSEを中心に
SARSの脅威は消えたのか
岡部 信彦
1
1国立感染症研究所感染症情報センター
pp.861-864
発行日 2004年11月1日
Published Date 2004/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401100498
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突然に現れ,そして消えていったSARS
おそらくは2002年11月頃より,そして病原不明の重症肺炎として2003年3月頃より注目され,WHOによりGlobal Alertとして世界中に注意が喚起されたSARS(重症急性呼吸器症候群)は,世界的規模で原因の探求と対応が行われた.その結果,病原体も異例の早さで明らかにされ,新たな知見が積み重ねられたが,不明の点も未だ多い.そして,各種の介入が成功したか,あるいは自然に消滅したという見方もあるが,SARSは次第に終息し,2003年7月5日「最近の地域内伝播」として指定された国はなくなった.2003年9月26日時点での患者数は8,098名,死亡者数は774名である.
これでSARSの脅威は去ったのであろうか?
2003年9月シンガポールにて1名の感染者が,2003年12月台湾にて1名の感染者が,それぞれ実験室内での感染例として確認されている.両事例とも,早期発見と早期隔離,早期からの疫学調査などにより二次感染はなく,そのことが確認されており,人々も比較的冷静に対応できたと言える.また幸い両例とも予後は良く,いわゆるsuper spreaderとしての要素もなかったとも言える.
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